【解説】なぜソフトバンクは大赤字でも潰れないのか？

こんにちは、アリスターです。

「ソフトバンク、1兆円超の赤字」
そんなニュースを見ると「あれ、そろそろ倒産するのでは？」「こんなに赤字で本当に大丈夫なの？」と感じる方は多いと思います。しかもソフトバンクの赤字ってしょっちゅう報道されますよね。なので、疑問に感じるのも無理はありません。

ですが、ソフトバンクは簡単には潰れません。むしろ「赤字なのに株価安定」「赤字なのに営業利益は黒字」という、意味不明な状況が続いています。

この記事では、その仕組みや背景についてわかりやすく解説します。ちょっとした“からくり”を知ることで、赤字のニュースの見え方がきっと変わってくるはずです。

「大赤字」の正体とは？

まず、「売上より経費の方が多いと赤字」というイメージを持っている方も多いと思います。例えば、売上100万なのに経費130万、みたいな。
でも、企業の赤字には段階があります。ざっくり分類するとこんな感じです。（利益から見た方が分かりやすいので、そう説明してます）

利益の種類	計算式	マイナスのときの呼び方
売上総利益	売上－原価	特になし
営業利益	売上総利益－経費	営業赤字
経常利益	営業利益＋もらった利息－払った利息	経常赤字
税引前利益	経常利益＋本業と関係ない儲け－災害やリストラ費用	税引前赤字
当期純利益	税引前利益－税金	最終赤字

ソフトバンクの場合、一番最後の「最終赤字」が主なニュースの内容です。つまり、携帯キャリアなどの営業活動そのものではなく、投資の失敗（評価損）によって「赤字に見える」ケースが多いのです。

なおご存じの方も多いかと思いますが、説明いたします。
ソフトバンクは携帯キャリアやプロ野球球団のイメージが強いですが、元々は企業などへの投資で儲けるファンド会社です。

なぜ潰れないのか？

「結局、最終的に赤字なら潰れるのでは？」
「しかも毎年のように赤字じゃないか？」
と思いますよね。

それでもソフトバンクが潰れないどころか、大赤字を出してもバリバリ順調な理由が以下の３つです。

① 見かけの赤字

ソフトバンクの赤字は先ほども述べたように、実際のところは「株や会社の価値が下がったから」っていう会計上の損失（評価損）がほとんどです。

▶ たとえばこんな感じ：

ソフトバンクがある会社に1兆円投資。
その会社の評価額が7,000億円に下がると「3,000億円損した」という記録になる。
でも実際にその会社を売ったわけじゃないので、お金は全く減らない。

これを「評価損」といって、いわば“紙の上だけの赤字”なのです。
株の含み損と同じですね。今は10万の損になってるけど、まだ売ってないから何も影響なしみたいな。

🔍 大事なポイント：

評価損は会計上のルールで記録する必要があるだけ。
現金が足りなくなったとか、借金が返せないという話ではない。
つまり見た目は大赤字でも、実際の経営には影響ないことも多いということ。

② 大黒柱が支えている

今のソフトバンクの大黒柱は、携帯電話やインターネット回線などの通信事業です。これらがジャブジャブと利益を生むので安泰なのです。

▶ ポイント：

この事業は景気が悪くても使われ続ける。
利益が安定していて、しかも毎年増える傾向。
例えば携帯キャリア部門では2023年度に約8,000億円の営業利益を出している。

📌 つまり：

投資で失敗しても、本業で稼いでいれば会社は回る。
しかも、この収益は月額契約なので毎月コンスタントに現金が入ってくる。
「本業で稼げている」という安心感があるから、投資の赤字があっても経営が傾かない。

ニュースになるのは赤字の時だけなので、何だか毎年投資で失敗してるように思えますが、実際は投資でも成功してる時もあります。例えば、アリババやARMに出資して数兆円も大儲けしたのは有名な話です。

③ わざと赤字にして節税

個人的には、これが本命の狙いだと思います。
ソフトバンクはこれまでも”節税にご熱心”なあまりに、国税局から何度もメスが入っていますし。

▶ どういうこと？

法人税は「利益が出た会社」にかかる税金です。
評価損をたくさん出せば、帳簿上の利益が減って「赤字」となり、税金がかかりません。
携帯キャリア等で大儲けしても、帳簿上は赤字なので法人税なし！

そして以下のように、ソフトバンクは大儲けしたにも関わらず、投資の損を理由に法人税を免れています。

📊 例：

ケース①：2020年度

📉 SBG全体の業績

最終損益：▲9,615億円（赤字）
主因：ソフトバンク・ビジョン・ファンド（SVF）のWeWorkやウーバー等への投資失敗で巨額の評価損。

📈 通信事業の利益

営業利益：約9,117億円
安定した携帯通信収益とY!mobileなどの好調により、高水準の利益を維持。

💬 概要

通信で約9,000億円稼いだが、投資部門でそれ以上に損失を出したため、グループ全体で赤字 → 法人税負担ほぼなし。

◾ ケース②：2022年度

📉 SBG全体の業績

最終損益：▲9兆円超（赤字、過去最大）
主因：金利上昇・テック株暴落により、SVFの投資資産が大幅に減損。単体で5兆円以上の評価損。

📈 通信事業の業績（ソフトバンク株式会社）

営業利益：約1兆601億円
通信事業は引き続き好調で、前年比でも営業利益が1兆円超え。

💬 概要

通信で1兆円以上の利益があったにもかかわらず、投資部門の巨額赤字で最終的にグループは大赤字 → 法人税ゼロまたは極めて軽微。

項目	ケース①（2020年3月期）	ケース②（2023年3月期）
最終損益（SBG全体）	▲9,615億円	▲約9兆円
通信事業の営業利益	約9,117億円	約1兆601億円
法人税の扱い	実質的にほぼゼロまたは軽微	実質的にゼロまたは軽微
要因	SVFの投資評価損	テック株暴落による評価損

💡 ポイント：

携帯キャリア等で莫大な利益を上げても、会計のルールを活かして赤字にできる。
合法の範疇であり、戦略的な会計処理。
大企業ほど、こういう「利益コントロール」を巧みに行っている。

🔚 整理

理由	内容	補足
① 見かけの赤字	評価損が中心なので、お金は実は減ってない	売らない限り、損は確定しない
② 本業でしっかり稼いでる	通信事業の利益が毎年安定して大きい	数千億円レベルの営業利益
③ 赤字で税金を減らせる	帳簿上の損をうまく使って法人税を節約	節税で現金を温存できる

この3つを押さえると、「最終赤字だから経営がヤバくなり、リストラや倒産の危機」という一般的なイメージは、必ずしも当てはまらないことがわかります。
逆に言えば、「数字だけ見ても本当の経営状態はわからない」ということですね。

ソフトバンクは“巨大な投資ファンド”

最後に、ソフトバンクグループを一言で表現するならば、「投資ファンド型の会社」と言えるかもしれません。本業で安定収入を得つつ、リスクを取って有望企業に投資する。だからこそ、一時的な大赤字があっても、すぐに破綻するような状況には陥りにくいのです。

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